浄土真宗 人に聞けない質問箱
作法や習慣に関しましては、地域や宗派によって様々でございますので、あくまでも安芸教区(広島県西部)の広島市旧市内のものをしてお考え下さい。詳しくは、地元のお寺さんへ、ご遠慮なくお問い合わせ下さいませ。
Q4 法名と院号と戒名の違いは?
浄土真宗では「法名」(ほうみょう)というものを使います。一般には「戒名」(かいみょう)と混同されがちですが、意味合いはかなり異なります。また法名は無くなった方へつける名前ではありません。
では・・
法名は普通 釈** という具合に、釈の次ぎに2文字つけます。女性の方でしたら 釈尼** と「尼」(に)の文字が敬称として付随する場合もありますが、最近では男女平等の立場から、尼をつけない方向にあるようです。
この「釈」はもともとお釈迦様の釈の字をいただいたものです。仏教に入る、お釈迦様のお弟子さんにならせていただく、そういう意味で、師匠の門下に入ることで「釈」を頭に名乗ります。
例えば、落語家を志す方が、師匠の門下となり「笑福亭」「林家」「三遊亭」とその名を名乗るのと同じ意味です。
例えば、笑福亭鶴光 さん と言う場合は、笑福亭門下の鶴光さん という意味となりますが、
釈白熊 (仮名) と名乗る場合は、お釈迦様の門下の白熊さんという意味になります。
一般に、法名は死んだ人に付ける名前と思われていますが、もともと仏教に入門された者が名乗る名前ですから、本来は生前に本願寺で「おかみそりの儀」を受けられて、名前をいただくわけですが、生前に法名を頂かれておられないばあい、葬儀の時に、「剃髪の儀」(ていはつのぎ)(おかみそりと同じ意味)として、名前を頂きます。
法名をお寺でおつけする場合、その方の名前にちなんだ文字を引用したり、その方の嗜好に合った字を使ったり、その方の雰囲気を表す字を使ったりします。それぞれに意味合いがあり、字そのものの優劣はございません。
私は、その方の名前から一文字頂いて考える場合が多いです。
キリスト教で「洗礼」(せんれい)を受けられた方がクリスチャンネームをいただかれると思いますが、意味合いとしては法名とかなり似ているものです。
浄土真宗では
「初参式」(しょさんしき) :小さな子供さんが初めてお寺にお参りされる式。
「帰敬式」(ききょうしき) :本願寺で行われる「おかみそりの儀」 浄土真宗に帰依される式。
これらが、洗礼と同じ意味合いとなります。
他の宗派では、「戒名」を使う所もありますが、これは本来、厳しい修行を修めた方に対して死後つける名前(宗派によっていろいろであると思われますが)という意味合いが強くなります。従って、優れた方に対してはいわゆる「良い戒名」が付けられます。
どちらかというと、亡くなった者へつける、死後の名前という感じが強くなるような気がします。
浄土真宗の寺院の比率が少ない地域では、慣例的に「戒名」と総称されることが多いような感じがあります。
また「院号」(いんごう)は、本来は、皇族が政治を離れ出家した場合に付ける尊称として古くは用いられていたらしいのですが、後に、特別な功績のあった者への尊称として使われるようになり、現在は、本願寺等へ功績のあった方へおつけする尊称という意味合いが強くなりました。院号は在っても無くてもかまいません。
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また、法名の下に「大姉」(だいし)などといった文字が付随するケースもありますが、現在は浄土真宗本願寺派では法名の下にそういった称号を付ける事はありません。幼い子供さんが亡くなられた場合「童子」(どうじ)と記述するケースはありますが、基本的に釈+任意の2文字が原則となります。
浄土真宗の法名は、亡き人に付ける名前ではありません。またその法名を位牌に刻みそれを拝む事はしません。浄土真宗では「霊魂」(れいこん)という考え方はありませんので、亡き人の御霊に名前をつけ、それを供養するといった事もありません。従って、浄土真宗では「位牌」は用いません。また木簡に墨で法名を書き込んだ「法名板」(ほうみょうばん)も形は似ていますが位牌とは別のものです。現在は、基本的に「過去帳」(かこちょう)へ有縁の方々の命日や法名を書き込み、記録としてそれを保管致します。
ご法事などの際に、法名を安置し、それを礼拝する事はございません。いのちあるものみなが、お釈迦様の話を聴く者として、釈の字を名前にいただかせていただくのです。

1998/02/13
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