ヘリコプターのへりくつ
ブレードの剛性
30クラスだと、割とローターブレードの剛性は気にされない場合が多いのですが、基本的にブレードはねじれないに越したことはありません。以前、20バロンMXを飛ばしていた頃、JRCの30用ブレードを使っていたのですが、常識的なピッチ設定をしても、どうも浮きが悪い、さりとて、エンジンが負けているわけでもない。30でホバリング8度のわけもなし。
もしかして、ブレードがねじれに対して弱いのではと思い、ポリエステルレジンを塗布し、再度ヒシチューブで巻くと、非常に快調になる。ブレードグリップの箇所で、規定のピッチになっていても、回転中はブレードがねじれて、最も効率の良いと言われるブレード中央部あたりが、ピッチが逃げていたのでは、もともこもない。
JRC製のブレードに比べ、ヒロボーの30用のブレードは、いかにも安そうな材料で、見た目は悪かったのであるが、前後バランスはともかく、ねじり剛性は十分であったため、無難に使える。
京商のOHS製ブレードは、私はろくなめにあっていないのであるが、ローターをびゅんびゅん回して飛ばす設定ならば、問題ないのかもしれない。EPコンセプトのホバリングピッチが、キット標準で6−8度であるのも、この影響である。
シャトルZXに、ブラックホビー製のグラスローター(マルクから販売)を使った時、標準で5.5度のホバリングピッチをとっていたのであるが、説明書には4.5度で良いとある。びゅんびゅん回して使え、と言うことかと思っていたが、実際に飛ばしてみると1度ほど減っているはずであるが、同じ調子でホバリングするのである。
「ブレードの剛性が高いから?」と聞いてみると、「空気のかきかたの効率が違う・・」と教えていただいた。奥底はまだまだ深いのである。
インテークチャンバー
昨今では、メーカー純正エンジンでも最初からインテークチャンバーがついたものがあるが、その効能については、専門誌でもけっこう怪しい解説がおおいのである。
我々の身近では、ヤマハのオートバイに「YEIS」(ヤマハエナジーインダクションシステム)として目に触れたのが、大きく取り上げられた最初かもしれないが、当時、初期型のRZ250に社外品として使われていたものは、2サイクル2気筒エンジンの2つのキャブレターを膨張室でつなぎ、吸気側の負圧の変動をなだらかにするものであった。
最近では、2輪の2サイクルでも、排気側のデバイスがあれこれ普及し、インテークチャンバーはあまり目立たなくなったが、なにも2サイクルエンジンだけのものではなく、ホンダのXLR250RFまではこっそりポリのチャンバーがついていた。チャンバーの形状をとらなくとも、スズキのTS200には、インテークマニホールド(ヘッド側)に太いゴムパイプが継がっており、シートレールを一回りして、再びマニホールドに継がっている。これも同じ効能である。
何をするためのものか? それは、2サイクル4サイクルを問わず、負圧で燃料を吸い出して霧にするキャブレターのために同じ効果をもつものである。2,4サイクルを問わず、キャブレターの中を通って行く気流の速度は一定ではない。吸気行程ではどんどん吸い込まれて行くが、圧縮が始まると、次の吸気開始まではエンジン側は行き止まりである。しかし慣性過給で空気はある程度は流れ込むが、やがて止まり、今度はエンジン側の方が圧力が高くなり、吹き返しとなる。
この吹き返しは、低・中回転で、負荷の多い状態ほど顕著である。(ヘリコプターなどは特にそうである)しかも、キャブレターを通過していく空気の速度が速ければ速いほど、燃料は安定して霧となって吸い込まれて行くが、流速が落ちれば、霧となり難い、まして吹き返された場合は、本来の混合気がエンジンに入らず、実質的にはより薄い混合気で運転しているのと同じ状態になる。(そのぶんだけ濃いめのセットが必要)
となると、キャブレターのスプレーバーから燃焼室(吸気側バルブ)までの空間が大きければ大きいほど、吹き返しは減るのであるが、極端に長い吸気マニホールドでは、定常運転が本来の産業用エンジンならともかく、エンジンのピックアップは悪化するのである。(模型用4サイクルエンジンがやたらと長いインテークマニホールドをつけているのはこのためである)
このために、キャブレターから吸気側バルブまでの空間に圧力安定のための別室を設けたものが、トビークラフトなどから出ている模型ヘリ用のインテークチャンバーである。
従って、燃料噴射タイプのエンジンではまったく理屈が変わるのであるが、この場合も、燃料の吹き出し口の前の流速を安定させるため、インダクションボックスとして、似たようなものが付いている場合がある。これはキャブレター用の吸気チャンバーとは若干意味合いが異なるのである。
別に、チャンバーを付けたからと言って、劇的なパワー増大があるわけもないであるが、キャブからの吹き返しが減るので機体内部が汚れにくい、燃料が無駄にならないので燃費が延びる、高負荷の運転でも、安定させ易いという効果は認められる。しかし、無くても同様のセッティングは出せるのである。でもあったほうが調整は楽である。
テール叩き
オートローテーション&ランディング(日本語だと「自動転回降下及び着陸」)等の練習をしていますと、うまい具合に指定点に降りてきた機体が、着陸と同時にローターでテールブームを叩き飛散してしまう事があります。
通常のホバリング練習でも、入門初期の頃は風にあおられて後ずさりしながら接地すると同じ様な目に遭います。
一般には接地したショックでローターブレードが下に下がってテールブームを叩くと言われていますが・・・・
回転中のローターブレードにはかなりの力の遠心力が外方向に向かってかかっています。すっとんで行かないためにグラスローターなどではロービングやピアノ線で補強されたものもあります。
飛行中のローターブレードはブレードグリップで上下方向の保持をしている、と解説された本もあるようですが、実際にはこの遠心力と揚力と重力のバランスの上にローターの回転面は形成されています。(実機の全関節型ヘッドを思えばわかると思います)
実は、テールブームをメインローターで叩くのは、接地のショックでローターが下がって来るのではなく、尾翼が地面にスキッドより先に接触したショックで上に跳ね返されて、ローターの回転面に近づいていくためなのです。(師匠の受け売り)
試しに、ホバリング中にエレベーター・エルロンを強引に操作してみましょう。極端な高回転で3Dばりばりのセッティングで無い限り、ローターの回転面はそれほど急激に動くわけではありません。舵を打ってでさえそうですから、接地のショックでブレードが下にしなることは実は無いのです。
試しに頭から突っ込ませてみましょう。(しなくていいですけど)ブレード先端が前方の地面と接触することはあっても、ブレードが下にしなることはないはずです。膝くらいの高度から落下させても同じ事です。
回転が極端に落ちていたり、ダビンチのヘリコプターくらいオートロの最後でピッチがついていると接地のショックでブレードが暴れて水平尾翼の下に攻撃を加える事もありますが・・・
万が一、エンジンストップ等の緊急着陸や、オートロでの着陸練習の時などでは、最初は少し前に突っ込ませる程度に前傾で接地させましょう。
覚えているだけで、大破とだいじょうぶの境目となります。
と言う話を随分前に先輩(経験年数は私と大差ないのですが、たまに飛ばす人と、めいっぱい研究する人では25年後にただの趣味人と世界の頂点くらい差が出る物です)に聞きました。助かる確立はかなり高くなります。覚えて置いて損はありませんよ。
オートローテーション
最近は機体も良くなって、ヘリコプターを初めて3年程度の人でも背面だダウンフリップだと言う時代です。
ところが、オートローテーション&ランディングはやはり難関です。180度方向転換無しに真っ直ぐ入って来るものならば、高度と風力の見極めだけでそれほど難しいものではないのですが(特に最近の送信機はホールド時に別系統でトリムが設定できるので、右エルロンの補正もいらない)着陸時の一瞬のミスで機体を壊すことがあります。これは上の項でふれています。
ところが、オートローテーション自体は「マイナスピッチで回転を上げて降りてくる」とか「自由落下」という声がまかり通っています。
詳しい解説は省きますが (どうしても勉強したい方は、大きな本屋さんの技術書のコーナーでヘリコプターの力学の本を探しましょう。特に興味が無くても模型ヘリを扱うなら一通りそういう事もあるのかと目を通して見られると良いです)
具体的に言えば「滑空」です。グライダーの滑空や、飛行機の降下中は翼の迎角は地平線に対しマイナスです。しかし揚力を発生していないわけではありません。ヘリコプターのローターでは、根元と真ん中と先端では回転中の対気速度は変わります。風車の様に下側からの風を受けて降りるのは、降下によって翼端部が空気中を滑り降りる(回転力を発生する)、その回転力でブレードが前進し揚力を発生します。
極端に高回転な設定のヘリでは捻り下げ無しの対称ブレードを使うことが多い様ですが、準対称捻り下げブレードではマイナス3度くらいで降下してもその間しっかりと揚力を発生し滑空状態になります。
この滑空状態で高度を下げてアプローチするのが「オートローテーション」、地表近くで引き起こし(フレア)前進力を止め、前進速度が落ちれば移転揚力によって生じた浮力も減少します。その後、降下中のローターの回転の慣性を利用して無動力で着陸するのが「ランディング」です。
良いブレードだと、降下中にスティックに揚力を感じることができるはずです。
さぁ 練習しましょう。 テール駆動クラッチを使えば、最後までジャイロの効果が期待できます。
最終更新 2001/02/23