電動ダクトファンをもっと静かに



ダクトファンの推力を上げるには、入力するパワーを上げてやるのが一番簡単です。
しかし、その他の部分があまり大切にされていないのもやはり事実です。

今のように誰でも軽量高出力なリチウムポリマーバッテリーがあって、モーターも安価になる時代より少し昔、ニッカドの24セルとか36セルでもヨーロッパでは非常に高性能な電動ダクト機が飛んでいました。

この当時はまだセンサー付きブラシレスモーターが多く、シュコーンといった吸排気音で非常にクリアな音で飛んでいたのです。
現在主流のセンサーレスブラシレスモーターは、回転中に一瞬駆動を抜き、ローターの位相を検出しながら回っているのですが、この方法はどうやってもわずかな振動が発生します。

これを少しでもクリアな音で使うための方法について考えてみます。


91クラスのGPダクトで飛ぶか飛ばないかの時代、まだボブ・バイオレット氏がBVMブランドを立ち上げる前の頃はダクトファンではインペラとダクトとのクリアランスが非常に重要視されていました。
ボブバイオレット氏は、ダクト内周に小麦粉などのパウダーを盛り、瞬間で固めながらこのクリアランスを調整していました。

最近の電動ダクトユニットは、信頼性の高いものも多く、組み立てには高度な技量をあまり要求しませんが、さらにこの部分を煮詰める方法を考えてみることとします。


モーターシャフトをダクトケースのど真ん中に固定するための治具を製作してみました。
最近のHETのモーターなら3穴、他のものは2穴が主流ですが、ビス穴だけでは精度はやはり出ません。
仮組して、ファンを仮付けした状態で回しながらケースとのクリアランスを見ればわかりますが、それほど中心にかっちりモーターが止まっているわけでもありません。

そこで、このようなガイドを作り、モーターシャフトをダクトケースの真ん中に保持した状態で取り付けビスを締め込みます。

なんでもない事ですが、回転中のインペラ先端とダクトケース内面とのクリアランスが変化しながら回るのかは、効率の面ではかなり大きな要素です。

安価という事で、精度の(精度とか云々以下のもありますが)話にならない製品もたくさん出ていますが、ダクトファンというのは、単に筒の中で小径強ピッチのプロペラが超高回転してればいいというものでもないんです。こういう製品の方が静止推力は出ますので、一部のユーザーさんにはメリットもあるのですが、上で速度が出た後には、全く速度が伸び無い物になってしまいます。こういうのは厳密にはダクトファンとは言えません。
また、インペラとステーターのバランスが悪く、ステーターの翼形や角度も何も考えて無く、ダクト機なのにやたらと反動トルクの影響が出る物もありますが、これもどうなのかなと思うのです。
初期に自作ファンしか無かった頃や、組み立て式だった頃のファンはこの辺が非常に大きなポイントだったのです。

また、樹脂製のダクトケースは、見た目真円になっていそうですが、厳密にはかなり歪んでいます。
ダクト外側に真円のリブを立て、ケースの真円を維持してやるのも効果はあります。

この治具は3ミリ塩ビ板を高性能なレーザーカットマシンで加工して製作しています。
センサーレスブラシレスモーターの振動を消し、高回転するには、モーターマウントのステーターの剛性も上げる必要がありますが、外周からリング状の補強材を付け加えるのはこの面でも効果があると思われます。

画像はSAPACのT−45(初期型)のマウントフランジを付けたものですが、このフランジも真円維持の補強となっています。
この治具で組んだダクトは、共振点の解決はできませんでしたが、非常にクリアな音でまわってくれました。

このへん、まだまだ煮詰めるべき部分はたくさんありそうです。

2009/03/24






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