リチウムポリマー電池
この数年で模型飛行機の動力用にリチウムポリマー電池が急速に普及しています。
数年前でしたら携帯電話用バッテリーのジャンク品を改造して使う例が多く、あまり安全とは言えない物が正直あり、専門誌にそういう使い方が堂々と掲載される様なケースもありましたが、今は日本国内ならE−TecやKokam の物が割と容易に入手でき、使用例も多くあるため使う側には非常に嬉しい状況ではあります。
しかし、軽量・大容量という事だけで使うにはちょっと注意が必要だと思います。
リチウムポリマー電池は充電で扱いを間違うと発火します。
高放電タイプであっても実際に電流値を計測せず、卓上テストで数分使っただけでは適正放電値はわかりません。
充電の際には出来る限りバッテリー単体(機体から外して)で充電するほうが安全です。
フライト時以外はコネクターを抜きます。
小型電動機には夢のようなバッテリーですが、一つ間違うと大事故になります。
充電
実は充電中の発火というのはリチウムポリマーに限ったものではなく、20年位前なら普通の単2型ニッカドバッテリーでも初期のタイマー式急速充電器で充電中にバッテリーが過熱し発火したり車のシートを焼いたという事は全然珍しい事ではありませんでした。
(電池は火が出る事があります)忘れないように
ニッカドやニッケル水素でのデルタピーク検出の充電方式と違い、リチウムポリマー専用の急速充電器や高性能急速充電器のリチウムポリマーモードは、最初に設定したセル数と容量に基づいて、規定電圧までバッテリーの電圧が上がったらカットします。(違ってたらごめんなさい)
従って、充電するバッテリーのセル数を1セルでも間違うと、確実に過充電となり、場合によって発火爆発します。
必ず充電するたびにセル数と容量の設定をチェックしなければなりません。
充電中のバッテリーは、金属や陶器などの温度が上がっても燃えない物の上で充電するようにします。
充電中は目を離さないようにします。
これだけは確実に守るようにしたいものです。
超小型の電動飛行機も無線機類やモーターの進化によって誰でも簡単に扱え飛ばせる良い時代ではありますが、それは安易な取り扱いや不注意な姿勢を許すものではありません。
最初は気を付けているのですが、慣れてくると飛行後に電源コネクターを抜く事さえ忘れてる方がいます。小さな電動機だから・・という認識がそうさせると思うのですが、電動とはいえ50XCを使った機体で以前のCOX02位のパワーはありますし、600クラスのギヤダウンならそんなに電圧高く無くても2サイクル20位のパワーは楽にあります。20エンジンを手に持って回す人はいませんよね。
必ず充電器の説明書を良く読み、確実に設定して下さい。
放電
電動に詳しい専門店などで卓上テストで*Aまで大丈夫だったというコメントや広告を見ます。
しかし実際にフライト中の負荷をかけたわけでもありませんし、実際のフライト時間と同じだけ電流を流したわけではありません。
電動物は(電気は)特に理系の机上の論理が異様に通りますが・・・ 実際の測定の伴わない理屈は無意味です。
まぁ・・10C大丈夫よ・・・と売っておいてバッテリーの寿命が短くなった方が販売には結びつくのでしょうけど。
一部にはフライトテストもしないで(離着陸の痕跡すらない機体で)機体重量などのスペックだけを根拠に*分飛んだとか言われる事もありますので、お気を付け下さい。
バッテリーの性能は使用中の冷却や外気温度にも影響されます。
ちょっと余裕を見て使った方がモーターにも無理がかかりませんし、バッテリーの負担も軽くなります。
小さな電動ヘリに大容量の電池を積み、「**分ホバリングします!」という記述も見ますが、だらだら浮いてるだけならともかくそんな長時間びしっと止める操縦技量はF3C地方選手権などはるか雲の上の私にはできません。
だいたい・・そんな長時間使うとモーターもけっこう焼けますよ。
電流値だけでもいいですから、地上の静止状態でフルパワー時の電流値を測定し、それが使っているバッテリーに対して大丈夫かどうかは確認してから使うべきだと思います。
もしそれができなければ、いろいろな方の使用例を参考にして、だいたいの目安は付けられた方が良いですよ。
グライダーの上昇の様に短時間に大電流という使い方なら大丈夫と思いますが、「上で実際に飛べば負荷が軽くなるから大丈夫」という考え方はやめた方がいいと思います。
ちなみに・・・
GWSのEDF50という超小型の電動ダクトユニットがあります。何故かこれを専門誌でも50XCモーターを使っていると書かれる事がありますが、EDF50には12RLCというターン数の違うモーターが使われています。
これは基本的に7.2V(リチウムポリマーなら2セル)で使う事を前提にされています。
これを使った機体で、パワーが無いからとニッカド7セルまでなら大丈夫と思うのですが、リチウムポリマー3セルなどという使い方をすると確実にモーターは焼けます。
しっかり調べてから使うようにしたいものです。
私はエンジン機を飛ばしても5分くらいで降ろしてしまいます。超小型の高速な機体や可愛い超小型ダクト機は3分も飛べばにこにこ顔になって降ろします。
特殊な実験機ならともかく、大勢で飛ばす場合に一つの周波数を30分近く占有することは、あまり良いことではありません。
フルチャージで30分確実に飛ばせる機体なら、5分のフライトを4回は安全にできます。
一日中飛ばすならともかく、楽しんで飛ばすならこれで十分じゃないかな・・と思うわけです。
これなら家で確実に充電しておいて、飛行場へは機体と送信機と少しの工具で済みます。
私はオートカットが働くまで飛ばす事はまずありません。着陸やり直しのためのパワーは保険として温存しておきたいですし、タイマーはかなり余裕を持って早めに設定しています。
これは狭いエリアで安全に飛ばし回収するためには必要な事です。
パークフライヤーには宝物の様な夢のリチウムポリマーバッテリーです。
大切に丁寧に十分注意して使いたいと思います。
2003/10/06
追記
まだまだいろいろと勉強や実地テストをしていかなければならない部分もあるようです。
10月末に熊本の阿蘇でマイクロ機を飛ばして来たのですが(ちょっともったいない・・)E-Tec 1200の3Sパックを2個並列に作り替えた物を電動CAP10でテストしたのですが、充電不良に(これは親電源の問題で私が悪かったのですけど)パワー不足という問題がありました。CD-ROMモーターで飛ばす700の2セルパック機もちょっと気になったので飛行前に服の胸ポケットにちょっと入れて暖めて使ったのですが、「気温が20度より下がると起電力が落ちる」というのはどうも本当の様です。(同時に飛ばしたサイバードはあえいでました)
これ・・ 動力用なら「パワーないで?」で済みますが(怪しいと思ったらすぐに降ろしますので)無線機用に使っていて、高度を上げたときに温度が下がってくるとあまり嬉しい事では無くなります。
マイクロ機の場合はオーバーパワーな機体も多いので、多少パワーが落ちても飛ぶには飛びますが、寒い間はちょっと要注意です。
700の2セル使用機ならユニオンの300mah6セルニッケル水素と互換性を持たせておくのも良いかもしれません。
充電器はシュルツの330dでVer8.04以後なら設定を間違わなければある程度は安心して使えるのですが、これもまだ改善途上の様ではあります。
Ver8.06ではセル数の設定ミスを充電器側で検知してくれる事もあるようですが、ベテランの方の指摘の様にバッテリーのモード設定(ニッカド・ニッケル水素・鉛・リチウムイオン・リチウムポリマー)を間違えてしまうと事故はあって当たり前の様です。
むしろ以前のVer7.**の頃のように AKKU2側で設定した方が間違いが無い様な気もします。
(1200の3セルまでなら以前のバージョンで対応していました)
で・・ 私は実際には飛行場へはエアクラフトで扱っているE−Tecのリチウムイオン専用充電器(スイッチでモードを変えるもの)を使う事が多いです。
充電時間も変わりませんしこの方が安心して使える様な気はしています。(山ほど直列だ並列だという使い方には適合しませんけれど)
今のところ飛行機で普通に使っているのはGWSの50XCモーターをダイレクトやギヤダウンで使う機体かCD-ROMモーターで3A以下で使う機体でしかリチウムポリマーは使っていません。
KOKAMだと高出力な物もありますがちょっと高価ですし、400クラスのアクロ機やモーターグライダーなら大電流であれば500AR電流値が大きくなければHECELLを使う方が安心して使えます。
ちょっとパワフルなユニットを使う400クラスモーターグライダーなら短時間に最大で20A以上流れます。これをリチウムポリマーで補うにはかなり高性能な物が必要ですが、急角度で上昇させるグライダーはそんなにランタイムは必要ありません。だとすれば500ARがベストとも思えます。これで15A位までで抑えられればHECELLで良いわけです。
8セル程度の600クラス電動ヘリならば、3300のニッケル水素で8分以上のランタイムがありますし大きな電流値にも耐えられます。
使い分け・・という事なんだと思います。
モーターのランタイム、安全係数という考え方でちょっと余裕を持たせておくというのも大事かもしれません。
CD-ROMモーターとの組み合わせなら標準的な50XCよりも同じパワーなら消費電流はかなり抑えられますし、同じ電流値ならパワーは大きくなります。これなら300のニッケル水素との重量格差は小型軽量を闇雲に追いかけるだけでなければそんなに気にならないとも言えるかもしれません。
確かにメモリー効果があまり気にならないというメリットはありますけどね。これもまだ模索中です。
2003/11/04
追記2
コカム(私は使ってませんが)の大放電タイプやポリクエストなど高性能なバッテリーが入手できるようになりました。
一時の怪しい充電方法も安価で確実な充電器が増えたおかげで少しは安心できるようになりましたが、未だにユーザーのミスによる事故は起きています。
発火事故の話を掲示板やレポートで見ていると、バッテリーが外部から損傷を受けた物がやはり多いようです。特に最近多いEPPファンフライなどでは機体そのものは大丈夫としても墜落で衝撃を受けたときに中でバッテリーは同じように衝撃を受けています。
内部のリード線の固定が外れることもあるでしょうし、中途半端に外れて思いもよらない時にショートする事もあり得ます。
一部の輸入代理店が多ピンのコネクターを勧めていますが(確かにこれでないといけない理由もあるのですが)衝撃を受けたときにコネクターが抜けてくれないとバッテリーからの取り出し線を引っ張ってしまい中の基板を痛めショートする事も考えられます。
何もしないのに火が出ることも無いとは言えないのでしょうが、事例をみると原因無しとは言えないものもあるようです。
何かしたら少しでもバッテリーの状態に疑問があれば修理するか破棄する意志が必要です。
また、一部のスイッチ付きアンプをお使いの方で、飛行時以外にバッテリーのコネクターを接続したままにしている方があります。これは火が出てもおかしくありません。
20年ほど前にまだ田宮のラジコンカーでセメント抵抗のスイッチを使っていたときに走行後コネクターを抜かずそのまま置いておいて、何かの拍子にエンコンサーボが動いて低速にスイッチが入り、抵抗の発熱で火が出た例もあります。
飛ばさない(走らせない)時には必ずバッテリーのコネクターを抜くようにします。
基本です これくらいはしてもいいんじゃないでしょうか
バッテリーにコネクターを付ける場合には、必ずバッテリーからのリード線に直接コネクターを半田付けします。
この場合、プラス側もしくはマイナス側から順番に半田付け(絶縁チューブ通すの忘れないように)し、チューブを収縮させ絶縁してから反対側の極を半田付けします。
バッテリーからのリードを切る場合もプラスマイナス2本を同時に切ると確実にショートします。必ず2本別々に切り、どちらかの作業が終わるまでは末端をテープなどで絶縁しておきます。
バッテリーのリードに延長リードを半田付けしたり、リードの付いたコネクターを半田付けし、収縮チューブで絶縁する事は長期的に見て事故の原因でしかありません。何らかの理由でリードを引っ張ると被覆も引っ張られ絶縁チューブがずれるなどしてショートします。(隣同士ですので確実にショートします)
バッテリーとコネクターのリードは最小限にし、もしコントローラーとの間隔が遠い場合にはコントローラー側のリードを延長します。
バッテリーにメス側のコネクターを付けるのは当然ですが、輸送や保管中に小さな通電性の物がコネクターに付着するとそこでショートする事は当然起こります。ニッカドなら発熱やスパークで終わるかもしれませんが、リポだと出火します。
変な話ですが、私は受信機用の4.8V600mahのニッカドの端子を湿った指先でつまんでしまい、指先の表皮の内側でジュクジュクとショートして発熱し火傷した事があります。
ブラシレスコントローラーでは起きにくい(皆無ではありません)事ですが、ブラシモーター用のコントローラーにつなぎっぱなしにしていると何かの拍子でコントローラーが損傷しモーターが回ったりバッテリーがショートする事があります。
リポ全盛?の今では「ニッカドなら火を出さない」とか言われていますが、これが原因で燃えたニッカドバッテリー搭載機の事故例は山ほどあります。
墜落した時に慌ててスロットルをハイにしたまま・・・ でショートして発火という事もあるようです。
こういう人はエンジン機でもカットしないのでしょうが、大怪我します。
エンジンヘリはクラッチ付いてますので、墜落してスロットルリンケージが外れていなければ即座にエンジンカットは当然です。
当然の事なのですが、最近はエンジン機でも飛行後に燃料を抜かない方が多いです。確かにマフラープレッシャーの酸化したガスで劣化した燃料を燃料缶に戻さないという理由もありますが、入っているのはアルコールですので、帰りの車の中で漏れてしまう程度ならともかく、くわえている煙草で引火する事もあります。ガソリン機ならどうなるか考えたくないです。
物がふんだんに流通し誰でも買えるようになると、「誰でも使ってる」という事で安易な扱いが当たり前になります。
損傷したり膨らんだバッテリーを使わない方が良いと言っても「もったいない」の一言の方が優先します。
私の回りでは、消費電流も測定せずバッテリーに高負荷をかけて膨らんだとか燃えたというレベルの事故しか起きてませんが、ファンフライでけっこう損傷受けたバッテリー使っている例はよく見ます。
もうすこし真面目に扱う方が良さそうですね。
2004/08/18
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