SAPAC T-45 Goshawk
ダクトユニット:HET 6904ファンユニット
モーター:HET 2W−20
バッテリー:フリーマックス 22C 3700mah 4セル
ESC:ハイペリオン 80Aスイッチングレギュレーター仕様
受信機:双葉 8ch 2.4G
サーボ:ハイテック HS−65MG (エレベーター・ステアリング) タマゾー TS−1032(エルロン・ラダー・リトラクト) ハイペリオン HP−DS09−AMD(フラップ)
重量:1850グラム(程度)
海外でも定評のある中国SAPAC製のT−45ゴスホークです。私が入手したのは固定脚・フラップ無しの初期のセットですが、この機体の製作中にメーカーの方からフラップ付き引き込み脚改造前提の新型が発売になっています。
セットには標準で70ミリダクトが付属していますが、今回いろいろテストをしてみたく、仕様をかなり変更して仕上げています。
製作
製作といっても元がARF機ですので、素で組むなら何の苦労も無いはずです。
今回は68ミリダクト単発の機体で引き込み脚を楽しもうという事がメインですので、それなりにあれこれ手を加えつつ仕上げました。
主翼まわり
引き込み脚の取り付け位置は標準位置では丁度メインスパーが干渉してしまいます。実機の写真を見ると主脚は海軍機らしくトレーリングアームの大きなストロークを持った脚となっています。模型機でも形は再現したいところですが、タイヤ位置を優先し、引き込み脚ユニットの位置を下げスパートの干渉をさけました。
引き込み脚ユニットはジールさんで取り扱いのあるIMAXの小型エア式リトラクトを使いました。1.2キロくらいまでの機体での使用が無難なユニットですが、脚柱を3ミリピアノ線で作り直し、一部をコイル状にすることで強度を維持しています。(あまり足が長いと実機らしさが消えてしまいます)
実機は脚のステーもしっかりしており、脚の取り付け間隔も左右にかなり広めです。(模型機の場合、これが着陸後に左右へ振れやすい要因となります)
脚ユニットの高さを見ると、3ミリベニヤ2枚重ねのマウントでほぼ適正位置に脚が納まりました。
今回、ベニヤパーツのカットはデザイン事務所へ大きなレーザーカットマシンを導入した友人にかなり協力してもらっています。
タイヤは厚みのある物が使えず、キット付属のスポンジタイヤ(45ミリ)を使っています。収容部の厚みが無いため、固定はホイルストッパーを使わずEリング止め。
この辺の加工もかなり遊ばせてもらいました。
ピアノ線に細い穴が加工できればベータピンで固定するのも良い方法です。
IMAXのユニットはロバートなどのエア式脚より1サイズ細いエアチューブが使われています。当初アルミか真鍮でアダプターを製作する必要があると思っていたのですが、ロボット用などの空気圧動作のパーツを扱っている会社を見つけ、通販リストの中に異径アダプターがあるのを発見し楽させてもらいました。カプラーやチューブもこちらで入手。
フラップは元の主翼の後縁側スパーから後ろで切り出しています。上面プランク材を少し縁を残し、フラップとの隙間を埋めています。このへんは後日入手したSAPACのL−39の構造のまね。
一部の販売店ではこの機体は主尾翼がオラカバ仕上げと表示されていますが、(当然ですけど)中カバが使ってあります。私の入手した機体はメーカー出荷段階で主翼に損傷があり、その補修も兼ねてフィルムは主尾翼ともにはがし、模型店で購入してきたヨーロッパ製のオラカバを貼って仕上げています。
完成後の仕上がりや保ちは圧倒的に違います。
主翼もどうせ切ったり貼ったりしますので、細かいところは私は気にしません。
フィルムはがした時点で、主尾翼の翼端は整形やり直しています。後縁も納得行く状態にしておきます。
バルサのはずなんですが、削ると黄色い粉になるのは中国製であります。
尾翼まわり
水平尾翼は良く考えられたフライングテールとなっています。シャフトの受けとなるベニヤ板はエポキシ接着となりますので、シャフト側に気持ちほど油膜を作っておいて、エポキシ硬化後にガチッと動かせばガタはありません。このシャフトに水平尾翼を接着する時、いわゆる「花屋さんフィルム」を挟んでおき、エポキシが余分な所へ流れるのを防ぎます。
コントロールホーンはイモネジで固定後、低粘度瞬間をほんの少し流しておきます。(後で分解することはあり得ませんので、固定した方が安心です)
そこそこ機動も楽しめる機体ですので、ラダーは追加した方が操縦で遊べます。キットにラダー追加用の木製パーツも付属されています。
胴体まわり
引き込み脚は純正固定ノーズの位置より気持ち後ろに固定しています。メカプレートにマウントを固定しますが、それだけではプレートが弱いため補強加工しています。
ステアリングはワイヤーリンケージとなりますが、脚は前方に格納されるため、3ミリ真鍮パイプを半円に曲げ、機首内側に接着しワイヤーの向きを変えています。
サーボ側のワイヤーは先端をOに加工した0.8ミリピアノ線につなぎ、ピアノ線をサーボホーンへアジャスターストッパーを使い固定します。
ワイヤーの伸びや修正はここで調整可能です。
T−45は元のBAEホークと異なりノーズはダブルタイヤなので35ミリのタイヤが使えるよう受けをアルミ丸棒より削りだします。ARF機なのでこれくらいは手かけてやります。
ノーズの脚柱も当初IMAXのユニットに付属したものを使っていましたが、見た目と違い非常に柔らかい素材であったため、ピアノ線で作り直しました。
ピアノ線なので段付き部分は旋盤のバイトを受け付けにくいので、平ヤスリの側面で地道に加工。
ステアリングホーンは2ミリのイモネジ固定なので、脚柱をDカットしておきます。
ダクトユニットはSAPAC純正の70ミリが付属していますが、インペラのコレットが4ミリシャフト用のためHETなどのインランナーモーターが使えません。購入先のご厚意で純正アウトランナーをおまけして頂いたのですが(ありがとうございます)できれば良いモーターで飛ばしたいため頭ひねってましたら、表示は70ミリですが実際のダクト内径はHETなどの68ミリファンと大差ありません。
試しにHETのインペラを付けてみたところ何の問題も無いようですが、SAPACのケースはステーターが4枚支持、HETは3枚。このままHETの4枚ブレードインペラを使うのは面白くないため、ケースもHETを使うこととしました。
この機体(初期のT−45)はダクトの前端にベニヤ製フランジを接着し胴枠へ固定する構造のたがめ、フランジの内径をHETのファンに合わせれば互換性があります。
このフランジも知人にレーザーカットしてもらい、ついでにケースの真円度維持も兼ねています。
樹脂製ファンはユーザーが思っているほど真円ではありません。
今回はこのついでにHETのファンへモーターシャフトをど真ん中に合わせる治具も作ってみました。(詳細は企業秘密であります)ネジ穴だけで精度は出ません。
効果は絶大でした。
このへんはヴェモテックのミニファンを組んでいた頃は時間をかけて念入りに調整していた部分なので、当たり前といえば当たり前です。
ダイヤルゲージ当てて、目をこらしてハブ固定していた事を思えば最近のは安易です。
HETのファンはハブがテーパーコレットになっており、誰でもそこそこの精度が出せる構造になっていますが、たまに飛行中に抜ける事があります。
インペラ先端のビスを締めての固定のため、あまり強く締められない(インペラに無理な力を加えられない)ためなのですが、今回は念のため下記の手順で組みました。
- モーターシャフト、ハブを十分洗浄脱脂する。
- ハブとインペラのテーパーのはめ合い部に気持ち油分を与え、アルミどうしのかじりつきを防止。(グライダーのハブでも良くやります)
- モーターシャフト先端にほんの少し永久固着タイプのロックタイトを塗布しハブの取り付け深さを確認しながらインペラを仮締め。
- ロックタイト硬化後にインペラ固定ビスを一度抜き、低強度のロックタイトをほんの少し付け、固定ビスを無理の無いトルクで締める。
こうすれば抜ける事は多少防止できます。ハブとモーターシャフトは分解できなくなりますが、モーターマウントのシャフト穴はハブが付いた状態で抜き差しできますから、モーター交換などには問題ありません。
テーパーコレットが噛み付くほど締めるとセンターぶれします。
構造上コレット抜きが使えないので、このへんが無難ではないかと思われます。
間違ってもインペラのブレードを持ってめいっぱい締め付けたりしないよう。
ダクトケース前端内側の角は削って緩やかなアールにしておきます。(と・・HETの説明書に書いてありました)
SAPAC70ミリダクトと外径はちょっと違いますので、排気ダクトや吸気ダクトのジョイント部分は径が合うように加工しておきます。
インテークダクトはABSパーツを貼り合わせて作ります。インテークとの接合部で段差が出るため、ここをパテ修正しておくと良くなります。
空気は粘性がありますので、その辺も考慮しながら加工します。こういう事を無視してても結果は出ません。
その他
米海軍の練習機のスケール(セミスケール)ですので、灯火も遊んでみました。主翼左右に舷灯、胴体上下に衝突防止の赤点滅灯、排気口右側へ尾灯をそれぞれ高輝度LEDで追加しました。人がやってるの見ると面白くて簡単そうなのですが、配線がけっこうかさばります。
ステアリングサーボはラダーとは独立して操作しラダーからのミキシングで動作させます。プログラムミキシングの動作カーブで左右半分までの舵角を抑え、高速滑走中の蛇行を防ぎます。
独立チャンネルに送信機のダイヤルからミキシングをかけ、ステアリングのトリムとして別個に動作させます。
こうしておくと、ラダーのトリムと干渉しません。
また脚上げ時にはステアリングサーボのミキシングを解除し、飛行中に不要な動きをさせないようにしています。
フラップは1chで左右を動作させたいため、プログラムできるデジタルサーボを使用しました。片側をリバース設定にし、動作速度を抑える事でフラップはゆっくり動作します。
フラップ位置は(0度 1ノッチ 2ノッチ フルフラップ)で設定。
デジタルサーボを一部使っていますが、変なリンケージ設定をしなければ小型のサーボなら無駄な電流は不要です。スイッチングレギュレーター内蔵のESCを使いましたが、フライトには何も問題ありません。
今回は灯火用にキャッスルクリエーションのレギュレーターを別に使っています。
ESCは胴体の奥に搭載しますので、設定用の端子は外から届きません。フラットケーブルとコネクターを使い、中継ケーブルを追加します。
当たり前ですが・・・ 進角はオートなどにはしません。進角あげればパワー出るわけでもないですし、2極インランナーから多極アウトランナーまで対応できるオートモードは存在しません。不適切な設定はESCの無駄な発熱を招くだけです。
ファンユニットはHETの場合ほぼバランスが修正してありますが、ブレードのバリは落としておきます。
練習機ですが、パイロットは1名。ジールモデルさんオリジナルの1/10サイズパイロットに乗ってもらいました。
キャノピーの窓枠位置と胴体の塗り分け位置が合ってないのですが、この辺は我慢。
実機はラダー・エルロンの動翼は白塗装。垂直尾翼の根本はラダーの下端から下は白なのですが、これはそのままです。
付属ステッカーは気合い入れたスケール機ではないので、実機の写真見ながらそれなりに合わせます。
機首の3桁ナンバーは水平尾翼下の機体ナンバーの下3桁を入れるのでT−45ではおかしいです。 なんとなく納得いく組み合わせを見つけましょう。
キャノピーの固定は胴体側に小さなネオジウムマグネットを接着しておき、キャノピー側へ薄い鉄板を接着するようになっています。とはいえ、これだけでは心配なのでキャノピー前端の裏面にピアノ線を接着固定し、グライダーでよくある固定方法を使いました。
キャノピー後部は、胴体との接触面にベルクロを貼り、飛行中の脱落防止としておきます。(飛行でもこれで大丈夫でした)
マグネットだけで済ませる場合は、飛行毎にセロテープなどで貼っておく方が安全でしょう。
ということをあれこれ考えながら製作していたらけっこう時間かかりました。
時間に追われせっせと作業していたので、途中の画像はありません。作れる方なら文章でご理解できると思います。
フライト
笠岡でのイベントがあり、それに合わせて製作していたのですが、イベント前日に調整フライトができました。
例によって脚付きダクト機はモーターのアイドリング回転をミキシングで動作させます。またスロットルディレーも多めに入れ、モーターの急激な回転変化を抑えます。(こうするとタキシングが雰囲気出ます。キュンキュン言いながらぎくしゃく動くのは面白くありません)(ペラ機でもこれは使えます)
エンジンのスケール機でもタキシングでラフなスロットルワークをすると雰囲気は激減します。最近のアクロ専用機は実機でもオートバイ並のレスポンスを持っていますが、これもタキシング中はスロットルあおりません。
機体重量がけっこうあり、4セルでは不安でしたが、クリアな回転音でパワーは何も問題ありませんでした。2.4Gでの感覚の違いも気になりましたが問題なし。
主翼の捻れも全く無く、トリム補正はほぼ不要。
中速でも普通に飛ぶには問題なく、ループも大きな物が可能です。
機体形状から、練習機の割に失速癖は良くないようですが、エレベーターの指定舵角で機速を考えながら飛ばせば問題は無い様です。練習機なのにF−18やF−16より失速癖が悪いのも変な話ですが、最新の戦闘機はそういう特性になっています。
上空でフラップ動作させ様子を見ますが、ブレーキ動作のフルフラップでもピッチ軸に大きな変化は無く、指で抑えられるレベル。
パワー30%位で機首下げのまま減速できます。
トレッドが広いため、着地後におつりが余分にきますが、これは慣れで解決。(こけやすいですけど)
意外に癖の無い機体で、操舵の追従も良好です。胴体の側面積もあるので、ナイフエッジはそこそこ浮きます。
ローパスで一瞬翼端灯が見えるのは自己満足には大きなポイント。
重心位置はメーカー指定よりもう少し後ろ気味の方がピッチ軸の癖が減るような気もします。
ファンユニットをHET製に変更したのは大正解だったようです。
そこそこ速度もあり、機動性も高く、戦闘機とは違うフォルム、68ミリ単発ダクトでフラップついてリトラクトギヤが可能な時代です。