電動機のモーターのへりくつ
以前、「SEA&SKY」という専門誌がありました。電波実験社からは「モデルジャーナル」も定期刊行されており、幅広い情報を毎回楽しみにしておりました。
このSEA&SKYの表紙に、市村氏の開発された電動ヘリ(後に石政からスカイラークとして発売された機体のプロトタイプ)が登場したときのインパクトは今でも表紙をはっきり思い出すほど強烈でした。
当時は、アストロの高価な輸入モーターこそあれ、国産ではマブチのスーパーセルと呼ばれた三洋のニッカドとオートカットシステムと12vからの急速充電器とマブチRS550の組み合わせでモーターグライダー的な物がやっと飛ぶという状況でした。(時々ラジコン技術にマブチの試作機が登場し、驚かせてくれました)
これ以外には、フタバ産業がRS550と500mah8セル?で飛ぶ(AIだったかUIだったか)発泡スチロールの電動機があっただけでした。(京都の辻村氏のグループが大電圧小電流を実践し、効率の良い機体を飛ばされてもいました)
飛行機でそうでしたから、ヘリコプターでなど考えもつかなかったのです。(ほんとうに夢でした)
この市村氏の機体に触発されてマブチのRS540モーター2基に当時あったAYK(青柳金属)の1/12電動レーシングカー用のギヤを使い、アルミフレームにFRP板バネフラッピングヘッド、テトラの3ミリウレタンベルトにて電動ヘリらしき物体を高校の頃に作ったのが電動ヘリの始めでした。
都合このシリーズ?で丸ベルト駆動ピアノ線駆動含め、4機ほど製作致しました。
この当時、バッテリーはマブチのスーパーセル(600もしくは1200mahの8セル)で非常に重く、コントローラーも6v以上に耐えられる物はKOのRXー7?という巨大なものしかなく、スカイラークは巻き線抵抗をワイパーで使っていました。
この後、相模モーター製の高性能なモーターが京商などから出始め、マブチのRS540をノーマルと呼ぶようになりました。
充電器も進和やシャインテクニカからデルピットなどのデルタピーク検出型の充電器が出始め、それまでのメーターを見ながら15分ほど3c充電をするものより力が出るようになったのです。
このごろから、ベアリングの入ったエンドベルが分解調整できるモーターが出始め、田宮のテクニチューン テクニパワー 京商のルマンシリーズなどが現れ、飛行機に使っても10クラスの機体ならば6セルで十分飛ぶようになりました。
これをきっかけにモーターはどんどん消費電流を増したハイパワーな物が現れ(充電効率が向上し、ランタイムの制限のあるレースでも使えるようになった)モーターもどんどん高価な物になっていきました。
京商の電動バギー レーザーZXが発売になった頃は、モーター単体が2万円近く、FETアンプのレース用であれば3万円近いコストがかかるようになりました。(三和のスーパーボルテックスは・・まだ手元にあります)
現在のモーターやアンプの価格からは信じられないほど高価でした。
このFETアンプの台頭に付随して、KO等から電動飛行機に使える効率の良いFETアンプが発売になりました。この少し前にカルトのバロンウィスパーが田宮のダイナテック01モーターを使い発売になりました。1100mah8セルで飛行時間は6分を楽に超えていました。
とかく、電動ヘリでは 浮かない>パワーの在るモーターを使う>バッテリーが重くなる>浮かない という矛盾に陥りやすいのですが、最低限の強度しかないフレームに高回転小電流型のモーターを適正回転で効率の良いローターを回すという発想のヘリでした。
この同じ頃に初代の京商EPコンセプトが発売になっています。ルマンシリーズの大電流モーターに専用アンプの組み合わせでした。
このごろからストックモーターという概念が定着し、電動カーでも普通のRS540(のような香港のジョンソン製の方がパワーがあるとかないとか)を使ったレギュレーションのレースが増えてきました。
そして気がつけば、輸入品の高性能なモーターをのぞけば、15年ほど前に2万円もしたようなモーターが3000円くらいで手に入る時代です。
高周波アンプも15年前のバック付きノーマルアンプより安価に入手できます。嬉しい事です。
京商のルマン240ゴールドを載せたフラッシュEPが、1200mah6セルで縦8ができた感動は遠い昔です。
モーターの慣らしも諸説ありました。
CRC556等のようなミシンオイルを灯油で薄めた浸透性の高いオイルをコミュテーターに吹き付けながら慣らす方法。
低電圧で回しながら水中につけ、ブラシとコミュテーターを水研ぎする方法。
今はこんな事される方はいませんが・・ 当時はこれが正しかったのです。
1.5〜3vで延々と回す方法。(単1乾電池を1本か2本つなぎ無くなるくらいまで回す)
これは今も慣らしをするとき(めったにありませんが)には使う方法です。
モーターを他の動力で回し、コミュテーターとブラシを馴染ませる方法が良い様ですが、電動カーでレースをされている方に聞くとブラシよりコミュテーターのダメージを考えれば、柔らかいブラシを頻繁に交換する方法が良いと聞きました。
カーボンブラシもいろいろな種類がありますが、ブラシが減ってきたから交換ではなく、使用によってブラシ内部でスパークによる炭化が進み、ブラシが減らなくても抵抗が増え使えなくなる現象があります。
バロンウィスパーでダイナテック01を使っていたころ、パワーが落ちると感じたら(8〜10フライト)即ブラシ交換だと教えられました。
EPコンセプトやボイジャーE等の電動ヘリでは私はモーターの慣らしはしません。(初期馴染ませくらいはします)そのかわり、コミュテーターへのダメージの少ない柔らかいブラシ(すぐ減りますが)を使い頻繁に交換しています。また、モーターに過剰な負荷のかかる状態でのフライト(上空で思いっきり暴れるという状況よりも、負荷の多い状態で低回転でホバリングの方がモーターは苦しいのです)はできるだけ避けています。
コミュテーターも一回過熱させてしまうと研磨では元の性能までは戻らない様です。
飛行機の場合は低負荷で使えますから、じっくり慣らしをした方が性能を維持する期間が長くなると思います。
メンテナンスは
電動バギーのレースをしていた頃は、コミュテーターが荒れたら1000番くらいの耐水ペーパーで磨いたり、金属磨きで研磨したりしていました。
後に消しゴムを使う方が良いと言われ始め、今はブラシホルダーに差し込むタイプの研磨機が売られています。
普段はブラシを外し、エンドベルを外して内部のブラシのかすを清掃します。コミュテーターは極端に荒れている場合は、NIFTYの古井さんのHPで教えて頂いたガラス繊維のブラシで磨いていますが、それ以外は脱脂洗浄剤と使うだけです。
ブラシのスプリングが変形している場合は修正します。スプリングの先端(ブラシを押さえるところ)の曲がりを半分にカットしてブラシを押さえるような加工も昔はしていましたが、今はしません。ブラシ圧の調整も電動カーではしていましたが、空物では左右均等を心がけるだけです。
ブラシそのものは完全に消耗品です。模型店で柔らかめのものを大量購入し、タッパーやフィルムケースに入れて現場でも交換します。
進角調整は電動ヘリの場合、やや付けます。やや・・が怪しいのですが、ヨコモのモーターならエンドベルの切り欠き半分から一つほど付けます。(10度前後)消費電流を抑えたい場合は、進角0度に設定することもありますが、モーターカンの製造誤差もありますので、調整マークから心持ち進角を増やす側にずらしておきます。(逆に少しでも入ると大きなロスになるため)
進角を増やして、ピニオンギヤの歯数を1つ減らし低負荷で回転を上げて使う事が基本です。
電動ヘリの場合は、大トルク型のブラシ式モーターを大きなピニオンギヤで回す事は、あまり効率が良くない事が多いです。
もしそのようなモーターを標準の減速比で使うなら(EPコンセプトのノーマル)メインローターの回転が下がらない様な方向で、調整していく事が肝要となります。(浮かないからとピッチを増やしてより低回転で使うと確実にモーターを焼いてしまいます)
電動ヘリのモーターの選択の一例
EPコンセプト
7セル(8.4V)で飛ばす場合は、16〜12ターンのモーターで13〜14枚ピニオンギヤを使って飛ばすのが好結果でした。
おとなしく上空を走らせ、540度やオートロ、気が向いたときにループ・ロールなら13ターンくらいが良いでしょう。
機体が軽量なら16ターンでも危なっかしいループは可能です。(この方がフライト時間は延びます)
ダイナテック02Hに13〜14枚ピニオンで小電流フライトは一つの指標ですが、02Hはジョンソンが生産をやめています。
電動カーでレースをされているようなお店で、ヨコモなどのボールベアリングの入った進角調整のできるモーターを購入されると良いでしょう。
コミュテーターは大中小ありますが、電動ヘリではスモールコミュと呼ばれる物を使う方が良いような気が致します。
極端にハイパワーなフライトを望まれる場合やスケールボディの場合は8セル(9.6V)で飛ばされるのも良いでしょう。しかしコミュテーターの負担は増えますので、7セル以上にメンテナンスは必要です。
5〜6分のフライトで上空性能を優先するか、おとなしい上空フライトで7〜9分のランタイムを確保するか、好みで選択して下さい。
上空優先の場合 13〜11ターンのモーター 14枚〜15枚ピニオン
滞空時間優先の場合 ダイナテック02Hや16ターンくらいのモーター 13〜14枚ピニオン
純正モーター・純正ピニオンギヤで飛ばされる場合は、フライト5分(スケールボディではない場合)を目安にして下さい。
これより短い場合は、モーターに余分な負荷がかかっているかモーターのメンテナンスが必要です。
ボイジャーE
7セル(8.4V)で飛ばす場合は、純正(中身は12ターンです)かヨコモなどの12ターンのモーターで14〜15枚ピニオンを使われるのが良いでしょう。
初期モデルでは13枚ピニオンが指定でしたが、回転が上がらずみそすりの原因となっていました。
純正モーターはビッグコミュタイプ(コミュテーターの太いもの)ですが、スモールコミュタイプの方が相性は良いと感じました。
EPコンセプトより少しモーターの負担は大きい様です。
ヨコモ12ターンで15枚ピニオン、JR製FRPブレードの組み合わせで5分のランタイムを確保した上でループ・ロールが無難に可能です。
純正モーターで飛ばされる場合、良好な充電状態のバッテリーで飛行時間が4分以下という場合は、セッティングの見直しが必要です。
もう少し低めのピッチでホバリング出来るように調整します。
コンバートEX
ルマンAP29BBというモーターが指定されています。京商製品ではハイパーフライ以外では見かけなくなりましたが、海外では400クラスのハイパワーなクラスのモーターとして使用例がたくさんあるようです。
非常に大食いなモーターですが、現在では同クラスでもう少し消費電流の少ないモーターも入手可能な様です。
通常のRS380で飛べば、もう少しフライト時間の延長の可能性もあるようです。
現在この機体は生産中止になって久しく、手元にパーツストックが無い場合は自作しか選択肢がありません。
このクラスに興味がおありでしたら、ModelSport社のHornetが将来性があると思えます。
ピッコロ
マブチRC280が指定です。載せ替え可能なサイズのブラシレスモーターもHackerなどから出ている様ですが、あの「マブチRC280」で電動ヘリがふわふわと頭の上を当たり前のように飛び回る事が、過去を振り返ったときに驚異的な技術革新に思えます。
ブラシレスモーターの使用に関しては、愛媛の清水さんのページに飛ばれると、様々な条件でのテストをされ非常に詳しいデータが公開されています。
搭載例 EPコンセプト ボイジャーE
同クラスのエンジンヘリと比較して・・
私が電動ヘリをはじめた頃はまだ20クラス以下のエンジンヘリは市販機としては存在していませんでした。(赤とんぼという09クラスが試作で一時でましたが結局現物は見ませんでした)
10クラス(実質は12から15クラス)のヘリとしては、ヒロボーのMH−10が最初でした。諏訪部さんがまだヒロボーにいらっしゃる頃で、独自の構造でそれなりに手こずりましたが、試行錯誤する間に良く飛ぶ様になりました。
しかし、この機体を良く飛ばすためにはF3Cトップレベルの方の調整技術もしくは効率の良いマフラーが必要でした。
当然、私にはそういう技術はないので(教えてもらえなくはないのですが、意地で・・楽しみ)師匠に教えて頂いて、10クラスヘリ用のカンマフラーや多段膨張式のマフラーをアルミ蝋付けで製作していました。
確かにOSのCZ−Hなどは当時の540クラスモーターよりも遙かにパワーはあったのですが、キャブレターの精度などの影響で、安定した中速トルクを維持するためには効率の良い(排圧の安定する)マフラーが必要でした。
後に京商からコンセプト10が発売になり、CZ−Hにリコイルスターターが内蔵されました。これはMH−10よりも軽量な構造でノーマルマフラーでもそこそこの性能を発揮していましたが、余裕をもってループをするためにはやはりマフラーの製作が必要でした。(パワーが出ると結構騒々しい機体でした)
2002年現在、この10?クラスのヘリは市販機としては発売されていません。(LMHはのぞく)試作機や自作機で18クラスエンジンを使われる力作も拝見しますが、これは電動600クラスよりもパワーがあるというより、600クラスのヘリより軽量なため良く飛ぶという面も大きくあると思います。
実質、良く調整された12ターンクラスのモーターや高出力なブラシレスモーターであれば、単体の出力は20クラスに匹敵し、ホバリング域でのトルクは小排気量のグローエンジンが太刀打ちできるものではありません。
だから逆に15〜18クラスのエンジンヘリも楽しいのですが、実際に市販に続く物は少なく、また真面目にマフラーまで作られたものは皆無な様です。
単純にエンジンだから、電動だからと比較する時代ではなく、エンジンの2サイクル4サイクルで選択するように、選択肢が増えたと考え使用目的によって使い分けるという事をしても良いかもしれません。
シャトルの初期型(28)で遊んでいた頃に、「そんなんで飛ぶのか?」と散々言われました。取り組む姿勢の問題だと思います。
p-bear@ba2.so-net.ne.jp